文字と向き合う
鈴木功 (タイプデザイナー)
今は文字とメディアの歴史の大きな転換期
Q.これからの書体デザイン

今のこの時代は、文字とメディアの歴史において、大きな転換期にあると考えています。甲骨文字や青銅器の時代があって、次に石に文字を彫っていた時代がくる。その後は木に書く時代。そして、紙が発明されて、15世紀頃にはついに印刷という技術が発明される。

紙の時代は未だに続いていますし、これからも続いてくでしょう。しかし現代においては、相当量の情報が流動的な情報ですよね。そういった情報の場合、記録や保存よりも、情報交換それ自体にウエイトが置かれます。これまでは紙媒体中心の書体のデザインでしたが、こういった時代には新しい視点での書体デザインが必要だと考えています。

まだ技術的な転換期ではあるので、技術的も流動的で定着していないのも事実です。つい数年前まで携帯電話の解像度もQVGAがほとんどでしたが、最近ではVGAが急増しています。テレビも同様に、液晶やプラズマなどの技術が混在しています。色々と出ては消えていく。ですから、技術の行き着く先も想定しながら進める必要があると思います。難しいですが。

Q.最近の仕事

まだ完成していませんが、先日「ドライバーズフォント」という書体を発表しました。車載用フォントなんですが、調査研究やリサーチやプロトタイプの制作など、ここ3〜4年やっています。これは運転中の車の中で、ドライバーがチラ見した時に「拾い読みしやすく、印象に残りやすい文字」というコンセプトで制作しています。運転中は情報収集という点で言えば、過酷な状況ですから、そういった状況でも素早く正確に文字情報を伝えるのが目的です。

運転中以外でも、実は生活の中でチラっと見て情報を得る場面はたくさんありますよね。携帯電話なんかもそうですし。ですからドライバーズフォントという名前ではありますが、ある意味では現代のライフスタイルにおける有用性が高いのではないかと考えています。

この書体の特徴の一つとして、ウロコと呼ばれる部分を、人間にとっての筋肉のような存在としてとらえ、この書体らしさの象徴として位置づけています。たとえるならサメの背びれのようなものです。ぱっと見た時にそれが文字であるということが瞬間的に分かる一種のフラッグとして捉えました。

また全角等幅ではなくて、文字の情報量によって一文字一文字の横幅が違うのも特徴です。欧文書体と同じように、画数や縦線の多いものは横幅が広いんです。

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